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知らずに入った南仏「人生初ミシュランのおもてなし体験」: CXの基本

11月 30, 2024 | Experiences

Izumi Tosa bio

Written by Izumi Tosa

Izumi Tosa is a brand and customer experience strategist and the creator of the ChaosClarity™ Framework and Assessment. Drawing on more than 20 years of experience in global brand, digital, content, and localization operations, she helps international teams uncover hidden friction, connect fragmented efforts, and turn complexity into clear, coordinated action.

顧客体験(CX)について考えるとき、予想外のタイミングや出来事から大切な学びを得ることがあります。無計画で訪れた人生初のミシュラン星付きレストランでは、料理の美味しさだけでなく、細やかな気遣いや温かいおもてなしを体験しました。スマホがまだそれほど普及していない時代に「写真記録」としてではなく「記憶」として強く残っている思い出は、今でもお友達に必ず伝えるストーリー。

この投稿では、この経験と記憶が「CXの究極のゴール」をいかにシンプルに教えてくれたのかをご紹介します。

南仏での女一人旅

40代後半にもなると「ミシュラン⭐付きのレストラン」に行ったことある人もたくさんいると思いますが、「初めての経験」ってやっぱり強烈に覚えてる方も多いのでは?

もちろん、今でも「自分へのご褒美」として旅行先などでめっちゃがんばって調べ尽くして、めいっぱいのおしゃれもしての「ビックイベント」としての扱いですが、わたしの「初ミシュラン」は全く想定外のタイミングで突然おとずれたんです。

それはまだ30過ぎの頃で「ミシュランガイド」というものの存在自体は知っていたけど、自分には遠い世界過ぎて興味もなかったころのお話。

大学時代からの親友がフランス人と結婚することになって、南仏プロヴァンス地方での結婚式に招待されたんです♪

それまでフランスには2度ほど旅行したことはありましたが、南仏は初めて。本来ならその親友とどっぷり一緒に旅行したかったのですが、さすがに花嫁は両家のファミリー対応に多忙だったので、結婚式の数日前から南仏入りして女一人旅を楽しむことに。

provence ally

お買い物が繋げてくれた初めての空間

南仏プロヴァンスといえばAix-en-Provence(エクス=アン=プロヴァンス)!結婚式もそこから車で30分くらいの郊外ということで、「エクス」に数日滞在することに。

エクス入りして初日はホテルのそばで適当に食べ、翌日は買い物三昧のあとだったこともあって、スーパーでワインとおつまみを買ってホテルの部屋で一人でまったりと。

そして、エクスでの最終日(結婚式の前日)も朝から市内散策とショッピングを楽しんでいたところ、お腹が空いたので遅めのランチをと思って、その時たまたまお買い上げした洋服ショップの女性店主に「近所でランチ美味しいとこ教えて~」って聞いたんです。

当時はGoogleマップもなかった時代。お店の方の口頭での道案内は「そこの道を15分くらいずっーとまっすぐ歩いて曲がってさらに数分歩くとお庭のあるレストランがあるからオススメよ」みたいなアバウトな指示に加えてレストランの名前も覚えられないようなフランス語。

「行けばわかるか!」と、とくに何もメモらずに移動したんです。

15分どころか延々と市内から離れた郊外に向かい、たぶん30分以上歩いたような記憶が。というのも、中心部を出るとレストランの気配すらない公道が続いてとりあえずひたすら歩くしかなかったから。

もはや最初の方で道を間違えたのかと戻ろうかと思った時、何だか緑が生い茂ってるガーデンらしき場所にたどり着いたんです。

わたし、場違い?

瞬時に私の頭の中では「わたし、完全に場違いなとこ来ちゃった、店員に気づかれないうちに帰ろう」って思ったんです。。。市内散策の延長で歩いてきたので、「ジーパン、Tシャツ、リュック、歩きやすい決しておしゃれではないサンダル」というなんともミスマッチな格好をしてた私。

しかも、実はそれまでのフランス旅行では、レストランでなんとも悲しい「アジア人差別」の記憶がちょいちょいあったので、そういう気持ちにまたなりたくないと思ったというのもありました(涙)

でも、その一瞬のうちにレストランの方に見つかってしまい、「こいつどこから来たんだ?」という顔つきではなく、とーっても素敵な笑顔で「Hello! 」と声をかけられ、気づいたら素敵なテラス席へ案内されて、帰れなくなってしまった。。。

smiling waiter

緊張をほぐしてくれた爽やかなウェイター

席について、「わたし、場違い」と思ってるのが顔に出てたのか、ウェイターの方が私の緊張をほぐすように雑談を。「今日はたくさんお買い物したみたいだね!(買い物バック持ってたので)」とか「旅行で来てるの? どこから来たの?」とか。

その流れで「お腹が空いてるの? それともコーヒーブレイクかな?」とメニューを差し出したあと、「美味しいものいっぱいあるからゆっくり選んでね!」と言って、サーっと遠くの方の私から見えない位置まで姿を消しました。

お店の佇まいからある程度の予想はついていたけど、メニューの金額は30過ぎの私にとっては「自分史上最高級」で、どのお料理も単品50ユーロとかのレベル。

でも、ここはもう「旅の思い出」と腹をくくって、メインディッシュにワイン1杯、そしてデザートとコーヒーを注文することに。

記憶に残ったのはお料理以上のもの

今だから「当たり前か」と思うミシュランレストランではいたって普通の「アミューズ」が3つくらい出てきて、その後にメインディッシュが。そこでのお料理の味や美しさを語り始めたらキリがありませんが、わたしにとって一生忘れないのは、そのお店の「接客」でした。

今みたいにWi-Fiなど無い時代、携帯も海外ローミングがバカ高い時代だったから、一人ご飯中に携帯で読み物、とかできないので、旅行ガイドブックを見ながら食事していたんです。

そしたら、ウェイターの人が「フランス語だけど、見るだけでもキレイだから雑誌持ってきたよ」って素敵な旅雑誌やファッション雑誌を何冊も。

そして、また見えないところへサーっと消えていく。

ワインも美味しいけど、喉渇いて飲んでたお水が減ってきたなぁと思っていたら、ウェイターを呼ぶ前に気づいたらサッと自動的にお水を足しにだけ来てくれる。

そして、また見えないところへサーっと消えていく。

その後も食事の合間にとってもフレンドリーに話しかけてくれつつも、「個」を尊重してくれる(っていうか姿も見えない)距離感と気楽な雑談を交えた、絶妙なタイミングのサービスと気遣い。

このレストランにとって、私の選んだお料理はフルコースでもなく、一番安価なものばかりだったはずですが、私がいかに心地よく過ごせるかを徹底的に考えてくれた本当に素敵な心遣い。
一人旅には慣れていたので、自分のペースでゆっくり食事をすることは大好きだったけど、まさか一人で2時間くらい雑誌をパラパラめくりながら高級フランス料理屋でカフェで寛ぐのと同じような感覚で「自分時間」を満喫できるとは!

ミシュランレストランだと知った瞬間

その日の夜、結婚式前夜ということで、結婚する親友とその家族とお食事をしたんです。
そして、私のミラクルなランチのお話をしたら、親友が「えーーー!そこ、一度行ってみたかったミシュランのお店だよ!私より先に行くなんてーーーー(涙)」とそこで初めてミシュランレストランだということを知りました。

「記録」ではなく「記憶」

今なら速攻SNSで写真や動画で大配信していたような美しいお庭とお料理ばかりのレストランでしたが、当時はレストランでガツガツ写真を取る文化ではなかった時代(少なくとも私は)。
だから写真は一枚もないんです。

にもかかわらず、私はこのレストランでの体験を家族や友達、初対面であったばかりの人にまで熱く語れるほど鮮明に記憶に残っています。

この体験を思い返すたびに、顧客体験(CX)戦略の本質について考えさせられます。本当の意味で優れたCXとは、ただお客様の期待に応えるだけではなく、その期待を超え、思わず驚きや喜びを感じさせる瞬間を作ることです。そして、その体験があまりに心に残るからこそ、人はそのストーリーを誰かに語りたくなるのです。

こうやって「他の人に自分の体験を熱く語り、見返りを求めずに、推奨する」。
これって、CX (Customer Experience:顧客体験)を考える上での基本でもあり、究極のゴールですよね。

「Customer Satisfaction:顧客満足」という言葉はたくさん聞きますが、お客様が「Satisfied:満足」しただけでは「熱く語れるような記憶」にはなりません。

ゴールは「製品やサービスに満足した上で、さらに想像を越えるような体験」。

高級フランス料理屋さんに行って高価なお料理を注文するのだから「美味しくて当たり前」。
でも、それに加えて他のレストランと比較して感じた違いが記憶に残る:

(1) アジア人差別ゼロ:

海外に住んでると意図しない小さな差別でも敏感になるので。

(2) 心地よいフレンドリーさ:

高級店のプライドや緊張感を感じさせない、物腰が柔らかくてアットホームなスタッフ達。

(3) 視野に入らないため、圧迫感を感じないウェイターの距離感:

監視されてる感じがしないながらもきちんと視野が行き届いているというプロ意識を実感。

(4) 一人旅の楽しさを理解してくれていた:

「自分時間」をおもいっきり楽しめる一人旅。過度な世間話は迷惑だけど、旅行の話やアドバイスなら喜んで聞きたい!テーマに合った雑誌をチョイスして持ってきてくれた。

どんなビジネスにも役立つ教訓

これは「レストランでのおもてなし体験」ですが、「おもてなし」とは宿泊業や飲食業以外でも「お客様」がいる限り、「どんなビジネスでも通用すること」ですよね。

(1) 全てのお客様に平等に最高のサービスを提供する

(2)お客様が心地よく感じる言葉遣いやコミュニケーションを徹底する。

(3)お客様の立場にたって、困っていることがあればいち早く察し、サポートし、解決する。

(4)お客様がそもそもどんな目的でサービスを利用しているのかを理解し、そのお客様に合わせた有益な情報を提供する。

こういう意識を持ったCX戦略を進めれば、お客様にも感謝され、気持ちは伝わり、心の底から喜ばれると思います。

小さな違いでも大きく記憶に残る

小さな気遣いでも、その心は確実に伝わります。高額な投資だけが「差別化」ではありません。例えば、レストランのウェイターが雑誌を貸してくれたようなさりげない配慮が、忘れられない記憶と感動を生むのです。

こうした小さな心遣いが、顧客の心に残り、思わず他人に勧めたくなる力を持っています。「おもてなしのココロ」をCX戦略に活かしたいとお考えなら、ぜひご相談ください。こちらからお気軽にお問い合わせを。

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